自分で購入した家を何らかの理由で手放しても「もうけ」が出ないケースが多いのではないでしょうか。
新築で住宅を購入したケースでは価格に新築プレミアムが乗っており、鍵を開けた瞬間に2割ほど価値が下落するなどと言われています。
また、中古住宅の場合でも建物は経年劣化で価値が下落しますし、そもそも住むために購入する方が大多数で売却の検討をして初めて自宅の価値を認識される方が多いのではないでしょうか。
このように住宅を売却しても損してしまうケースが大多数だと思いますが、それでも確定申告をした方がお得になるケースがあります。
住宅を売却し損した場合でも確定申告は必要?
利益が出た時は確定申告は当然必要ですのでお忘れなく。
損をしたのに確定申告をした方が良いのは次のケースです。
- 住宅ローン残高より低い価格で売ったケース
- 住宅を買い換えたケース
確定申告をするメリットは次の通り。
- 損益通算:損失を給料をなどの他の所得と相殺できる
- 繰越控除:今年相殺しきれなかった損失を翌年以降に繰り越し相殺できる
まずはメリットの「損益通算」と「繰越控除」を詳しく説明します。
確定申告するメリット
損失を給料をなどの他の所得と相殺できる(損益通算)
通常の不動産・株などの「売買で生じた利益や損失」は、会社員の「給料などの収入とは別で所得税が計算」されます。
これを分離課税といい、給与所得と譲渡所得がある場合には次のように計算されます。
給与所得200万円×税率10%=給与所得の税金20万円
譲渡所得100万円×税率5%=譲渡所得の税金5万円
所得税は合計25万円。
譲渡所得がマイナスだった場合はどうでしょうか?
給与所得200万円×税率10%=給与所得の税金20万円
譲渡所得△100万円×税率5%=譲渡所得の税金0万円
所得税は合計20万円。
譲渡所得はマイナスなので税金は0円です。
税金はマイナスにはなりません。
このように別々に税金を計算して最後に合計するのが分離課税制度といいます。
不動産の売却は分離課税なので、通常の場合はどんな損失が出ても税金は安くなりません!!
しかし、他の所得と相殺が可能になるのが「損益通算」です。
先ほどの例では、給与所得と譲渡所得を合計して税金を計算。
(給与所得200万円-譲渡所得100万円)×税率10%=税金10万円
損益通算のするかしないかで、10万円も税金が減りました!!
このように、売却損を他の所得と相殺して税金が安くできるのが1つ目のメリットです。
今年相殺しきれなかった損失を翌年以降に繰り越し相殺できる(繰越控除)
損益通算しても他の所得から控除しきれなかった損失を3年間繰り越せます。
今年の譲渡所得-150万円、給与所得が毎年100万円の場合
1年目:給与所得100万円-譲渡所得100万円
2年目:給与所得100万円-譲渡所得50万円
このように、最大3年間にわたって損益通算が可能なのが2つ目のメリットです。
税制メリットをわかってもらえたと思いますので、次は適用要件を確認していきます。
確定申告した方がいいケース
住宅ローン残高より低い価格で売ったケース
新築住宅を購入した場合はこのケースが多いのではないでしょうか。
主な適用要件は次の通りです。
- 住宅ローン残高より低い価格で売却している
- 売却損が生じている
- 住宅の所有期間が5年超(売った年の1月1日で判定)
「住宅ローン残高より低い価格で売る」
「売却損が出ている」
というは良いと思うのですが「所有期間が5年超」は注意が必要です。
これは、売却した年の1月1日時点で5年を経過していないとダメ。
5年前の6月30日に購入した住宅は7月で所有期間が7年を超えます。
しかし、この適用を受けるためには、年明け以降に売却しないと要件を満たしません。
その他に、
住宅の売却は引越してから3年以内じゃないとダメとか、
親族に売ったらダメとか、
他の税制優遇を去年に受けていたらダメとか、
いろいろ細かい適用要件があるので詳しくは国税庁のHPで確認してください。
住宅を買い換えたケース
旧住宅が新築・中古を問わずこのケースにあてはまる方も比較的多いと思います。
主な適用要件は次の通りです。
- 売却損が生じている
- 住宅の所有期間が5年超(売った年の1月1日で判定)
- 10年以上の住宅ローンで新居を購入すること
ここで気をつけたいのは10年以上の住宅ローンで購入するってこと。
キャッシュがあってもローンを組まなきゃダメです。
買い換えのケースもその他に、
住宅の売却は引越してから3年以内じゃないとダメとか、
売却の前年の1月1日から翌年の12月31日までに新居を買えとか、
新居を買った翌年の12月31日までに入居すれとか、
新居は50㎡以上でないとダメとか、
親族に売ったらダメとか、
他の税制優遇を去年に受けていたらダメとか、
いろいろ細かい適用要件があるので詳しくは国税庁のHPで確認してください。
最後に
住宅を売却して損しているのに確定申告をした方が良い場合を説明しました。
具体的には、
- 住宅ローン残高より低い価格で売った場合
- 住宅の買い換えた場合
このケースでは損益通算と繰越控除が使えます。
手続きが多少面倒ですが、税制優遇は国のキャッシュバックキャンペーンです。
ぜひ活用していきましょう。
サラリーマンの確定申告について説明しています。こちらをご覧ください。
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