役員退職慰労金の税務上の取扱い

会計・税務
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私は一般事業会社で経理をしています。

仕事で検討を行った案件について、情報共有と備忘記録を兼ねて記事にしていきます。

今回は、役員退職慰労金について、

役員退職慰労金の支給確定年度から10年以上経過した後に支給した場合の税務上の取扱いはどうなる?

を検討しました。

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役員退職慰労金とは

取締役や監査役への退職金をいいます。

通常の役員報酬であれば定款や株主総会決議で上限を定めているのが一般的ですが、退職金の支給額を予め定款や株主総会で決議しているケースは少ないと思われますので、その支給にあたっては株主総会の決議を経るのが一般的です。

株主総会の決議を経て支給される役員退職慰労金ですが、

  • 支給金額
  • 支給時期

によっては損金算入できないケースがありますので、次で確認していきます。

税務上の取り扱い

損金算入が認められる金額

役員退職慰労金が損金として認められる金額は明確に定められてはいませんが、以下の計算式で算出するのが一般的です。

役員退職慰労金 = 最終の月額報酬 × 在任期間 × 功績倍率

  • 最終の月額報酬
  • 在任期間

上記の2つは事実に基づくもであり、月額報酬が過度に高額で無い限り税務当局と揉めることは少ないと思います。

しかし、功績倍率は注意が必要です。

功績倍率は、

  • 主観的になりやすい(ルールが曖昧)
  • 支給金額の調整にも使われやすい項目(退職金を○○万円にしたいから○倍)

上記から税務当局が最も警戒するポイントです。

一般的には、3倍までは認められると言われていますが、何でもかんでも3倍で良いという訳ではありません。

例えば、代表取締役経験者は3倍、専務は2倍、取締役は1.5倍などのルールを作りましょう。

その方が税務当局への説明もスムーズになり理解を得られやすくなります。

損金算入の時期

法人税基本通達9-2-28に記載があります。

(役員に対する退職給与の損金算入の時期)

9-2-28

退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。ただし、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「三十二」、平19年課法2-3「二十二」により改正)

損金算入が認められるのは2つ

  • 株主総会決議等で確定した年度
  • 退職金を支給した年度(損金経理要件あり)

原則は支給額が具体的に確定した年度です。

確定年度では損金経理をすることなく損金算入が認められます。

しかし、なんらかの事情により確定年度と支給年度が異なる場合は、損金経理を要件として支給年度に損金算入することも認められています。

確定から10年以上経過した後に支給する場合

なんらかに理由により支給確定から10年以上経過した後に役員退職慰労金を支給するケースがあります。

そこで、考えられるのは通達の原則と例外のどちらを採用するのか?ですね。

確定年度で損金算入する場合(原則的な方法)

このケースでは、支給額を未払金または長期未払金へ計上することになります。

役員退職慰労引当金を設定していない場合

確定時:役員退職慰労金/未払金(長期未払金)

支給時:未払金(長期未払金)/現預金

役員退職慰労引当金を設定している場合

確定時:役員退職慰労引当金/未払金(長期未払金)

支給時:未払金(長期未払金)/現預金

個人に対する未払金が10年以上残りますので少し違和感があるのがデメリット。

支給年度で損金算入する場合(例外的な方法)

このケースでは、現金支出があった時に通常の経理処理を行ないます。

役員退職慰労引当金を設定していない場合

確定時:処理ナシ

支給時:役員退職慰労金/現預金

役員退職慰労引当金を設定している場合

確定時:処理ナシ

支給時:役員退職慰労引当金/現預金

確定から10年以上経過した後に損金算入するため、税務当局から質問にしっかりと対応できるよう支給確定当時の株主総会議事録や取締役会議事録などの関連書類を作成・保管しておく必要があります。

当時の書類が保管されておらず、税務当局への説明が不十分である場合には否認される可能性があります。

結論

確定年度と支給年度が大きく離れている場合、確定年度と支給年度のどちらに損金算入するか?が論点の一つになります。

確定年度で損金算入する場合、

長期的に個人に対する未払金残高が計上され違和感があり、残高をしっかりと管理する必要があるのがデメリットです。

支給年度で損金算入する場合は、

税務当局に損金算入ついての疑念を持たれる可能性があり、根拠資料を示しつつ説明しなければならない可能性があります。

そのため、当時の関連書類を保管しなければなりません。

しかし、最終的な可否の判断は税務当局がしますので、認められない可能性も少なからずあります。

これらの可能性を検討して、確定年度で損金算入する方が無難だと判断しました。

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